コラム:この先どうなる?超合金の原料高騰について

こんにちは、超合金買取専門店「グリスタ」です!
色々なものが値上げされ続ける昨今、超合金も例外ではなく
公式販売価格の値上げの傾向が続いています。

本日お話したいのは、超合金には欠かせない原料「合金」についてです。
最新情報とは縁が無さそうに思えますが、
原料の価格は製品の販売価格に直結します。

円安による景気低迷が続く現在、超合金の価格が
この先どうなるのかを
今回は原料であるダイキャスト合金に注目して
考察していきたいと思います。

【超合金の原料とは】

超合金玩具において「ダイキャスト製」という表現がある場合、
これは単に「金属製である」という意味ではなく
「金属を高温で溶かし、精密な金型に圧入して成型する」という
工業的にも高度な加工技術を指しています。

この方法により、プラスチックでは再現が難しい
複雑な形状や精密なパーツが可能になり、
さらに高い強度も確保されるため、超合金玩具にとって
理想的な製造手法とされています。

ダイキャストに使用される金属にはさまざまな種類がありますが、
超合金において最も広く使用されているのは、亜鉛合金(Zinc Alloy)です。
特に注目すべきなのが、「Zamak(ザマック)」と呼ばれる合金です。

Zamak(ザマック)合金とは?
Zamakとは、
亜鉛(Zinc)、
アルミニウム(Aluminum)、
マグネシウム(Magnesium)、
銅(Kupfer/Copper)
の頭文字を取って命名された、工業用のダイキャスト合金の一種です。
アメリカで1930年代に開発され、優れた加工性と
コストバランスから、家電部品、自動車部品、そして玩具など
さまざまな分野で使用されています。

超合金玩具でよく使われるのは、このZamakの中でも
「Zamak 3」と呼ばれる標準的な組成のものです。
その基本的な化学組成は以下のようになっています。

Zamak 3の代表的な構成成分(重量比
• 亜鉛(Zn)…約96%
合金の基礎成分で、腐食に強く適度な硬さと強度を持っています。
• アルミニウム(Al)…約4%
合金の強度と硬度を高め、鋳造時の流動性も向上させる役割があります。
• 銅(Cu)…0.05〜1%
耐摩耗性を向上させ、部品の耐久性を増やしています。
• マグネシウム(Mg)…0.03〜0.06%
酸化を防ぎ、鋳造の安定性と精度を高めます。

このZamak 3は亜鉛合金の中でも超合金玩具の複雑な
ディテールや精密なジョイント、細部の再現性に最適であり
超合金の特徴でもある「リアルさ」や「質感」の演出に大きく貢献しています。

【Zamakが玩具に適している理由】

Zamak合金が超合金シリーズを支えてきた最大の理由は、
その高い寸法精度と優れた表面仕上げ性にあります。
以下に、Zamakが玩具にとって理想的な素材である
理由を詳しく解説します。

1. 高精度のディテール再現
ダイキャスト工程におけるZamakの流動性は非常に高く、
複雑な金型の隅々まで金属が行き渡るため、
フィギュアの顔の表情や関節の形状、メカニカルなモールドまで、
細部まで精密に成型することが可能です。

2. 優れた表面処理性
Zamakは塗装やメッキとの相性も良好で、
クロームメッキやメタリック塗装などの美しい
外観処理を施すことができます。
これにより、ロボットトイとしてのリアリティと高級感を演出できます。

3. 強度と重量感のバランス
Zamakは適度な強度を持ちながらも重すぎないという特徴があり、
「持ったときのずっしり感」がありつつも、
遊びやすさを損なわない絶妙なバランスを保っています。
この重量感こそが、“高級ロボットトイ”としての
魅力を際立たせる重要な要素です。

4. コストパフォーマンスの良さ
亜鉛合金は、他の金属に比べて安価で、
鋳造時のエネルギー消費も比較的少ないため、
大量生産向けのコスト効率が非常に高いという利点もあります。
これにより、高品質を保ちながらも
一定の価格帯を維持することが可能になっています。

【他に使われる金属素材たち】

超合金シリーズではZamak以外にも、
パーツの特性や構造に応じて以下のような金属素材が使用されることがあります。

アルミニウム合金
軽量で加工性もある程度高いため可動部の内部骨格や飛行ユニットのパーツなどに
使われることがあります。
ただし、ダイキャスト加工における寸法精度や表面仕上げでは
Zamakに一歩譲るため、使用箇所は限定的です。

マグネシウム合金
非常に軽く、強度も高い素材として知られています。
航空機やスポーツカーの部品にも使われている
高性能金属ですが、腐食に弱く、コストが高いという欠点があります。
そのため、超合金シリーズではあまり一般的ではありませんが、
重量バランスを厳密に調整した一部高価格帯の製品では
使用されることがあります。

真鍮(ブラス)
加工精度が高く、耐摩耗性にも優れているため、
軸受け部品や関節の支点部分などに使われることがあります。
金色のメタリック感もあり、装飾用途でも重宝される素材です。

【ダイキャスト合金(Zamak3)の価格変動】

超合金というブランドは、単なる「金属製のおもちゃ」ではなく
その素材選定と価格戦略にも裏付けられた総合的な
価値提案で成り立っています。

Zamak 3合金の価格は、世界の金属市場、製造業の動向、
地政学的リスクなど、複数の要因に左右されながら
変動を続けています。
その変動は超合金玩具に直接的な影響を与えるものの、
バンダイをはじめとするメーカーは、長期的な契約戦略や
高付加価値化、素材の多様化によって巧みに対応しています。

過去10年間のZamak 3の価格の動き
Zamak 3の価格は、基本的には主原料となる亜鉛の国際価格
(LME=ロンドン金属取引所)に強く連動します。
以下は概略的な価格変動の流れです。

年度 / 亜鉛価格(USD/トン)/ 傾向・背景
2014 / 約2,000 / 安定基調
2016 / 約1,600 / 中国経済の減速による下落
2018 / 約3,500 / 世界的な需要回復で高騰
2020 / 約2,200 / コロナショックで一時下落
2021 / 約3,000〜3,500 / 半導体・金属需要急増
2022 / 約4,000超 / ウクライナ侵攻・物流混乱
2023 / 約2,500〜3,000 / 景気減速と需給緩和
2024 / 約2,500前後(安定)/ 相場は落ち着き、緩やかに推移中

※Zamak 3自体の価格は製錬・合金化・加工費を含み、
亜鉛地金価格+α(約20〜30%)程度とされています。

【市場価格の変動要因とその考察】

Zamak 3の価格変動を理解するには、素材となる亜鉛価格の
国際的な要因を知ることが重要です。以下に主要因を挙げて考察します。

1. 供給側:亜鉛鉱山の稼働・供給量
世界の主要な亜鉛産出国は中国、オーストラリア、ペルー、カナダなど。
採掘コストや環境規制、ストライキ、災害などで供給が減少すると
価格は上昇します。
特にコロナ禍や2022年のウクライナ情勢では、
物流の混乱や生産遅延が影響し、供給量が大きく変動しています。

2. 需要側:建築・自動車・家電産業の動向
亜鉛はガルバニウム鋼板(亜鉛メッキ鋼板)として
建築資材に多用されるため、住宅やインフラ投資が
価格を押し上げる要因となっています。
自動車部品や家電、電子機器などでも使用されるため、
製造業の景気とも強く連動します。
玩具分野の需要は全体に比べれば小さいですが、
Zamak 3に限れば特定分野として意味があります。

3. マクロ経済:為替、金利、インフレ
ドル安時は金属価格が上昇しやすく、
世界的にインフレ傾向の高い現在の局面では
原材料コストが全体的に上昇しています。
特に2021〜2022年はパンデミック明けの需要急増に加え、
物流の停滞で資材全般が高騰しました。

【Zamak価格変動の影響】

バンダイをはじめとする超合金玩具メーカーにとって、
Zamak 3の価格変動は無視できないコスト要因です。
以下にその影響を整理します。

1. 製品原価の圧迫
ダイキャストパーツはモデルによっては
全体の30〜50%以上を占めるため、Zama3の価格の高騰は
製品単価の上昇に直結します。
特にMETAL BUILDなどのハイエンドモデルは金属比率の高く、
価格高騰による影響がより大きくなります。

2. コスト対策としての素材選定変更
一部のパーツをABSやポリカーボネートなどの樹脂素材に置き換え、
低コスト化を図るモデルもちらほら出てきました。
合金の使用箇所を関節や内部フレームなど、
“見えないところ”に限定したり、真鍮やアルミ合金など
部分的な代替金属の使用も検討されています。

3. 価格改定・プレミアム化
材料費高騰の影響などによる商品価格の見直しは
すでに始まっています。
また、数量限定によるプレミアム化も顕著に進んでおり、
一部の製品では、完全受注生産や初回限定の「特別塗装版」などを
用意して高価格帯での展開も図っています。

【メーカーの対応と今後の見通し】

超合金フィギュアメーカーの代表格であるバンダイは、
Zamak価格の急変リスクに備え、以下のような
複合的戦略を取っていると考えられます。

1. 長期契約による価格安定化
原料メーカーと契約することで、一定の価格帯での安定供給を確保し、
LME価格からの変動を直接消費者価格に反映させないよう努力しています。

2. 高付加価値化によるマージン確保
METAL BUILDやMETAL STRUCTURE解体匠機などの
プレミアムブランドの展開により、価格上昇を
「価値の上昇」として受け入れられる戦略を展開しています。
また、超合金魂などでは既存モデルのリニューアル版や
専用オプションパーツを販売し、客単価の増加を図っています。

3. サステナブル素材・製造の模索
将来的には再生金属を活用したダイキャスト合金の
リサイクルルートの確立や、より環境負荷の低い合金への
転換も検討される可能性があります。

【おわりに】

超合金玩具が持つ特別な魅力の一つは、やはりその「素材感」にあります。
金属ならではの重量感、ひんやりとした手触り、
しっかりとした強度――これらが相まって、
単なるおもちゃではなく「本物らしさ」を演出しています。
そして、その質感を支えているのが、
「Zamak 3」をはじめとするダイキャスト合金なのです。
Zamak 3は、亜鉛を主成分とする合金で、
アルミニウムや銅、マグネシウムといった金属が適度に配合されています。
この組み合わせによって、強度と耐久性を確保しつつ、
細かいディテールを精密に再現することができます。
また、塗装やメッキがしやすく、超合金玩具特有の
美しい仕上がりを実現できるのも、この合金の特性によるものです。

ただし、こうした金属素材の価格は、世界の経済状況や
供給の変動によって影響を受けるため、
近年の超合金玩具の価格にも少なからず影響を与えています。
特に、Zamak 3の主成分である亜鉛の国際価格は、
建築や自動車産業の需要に左右されやすく、
また為替や経済の動向によって変動しやすい性質を持っています。
そのため、超合金玩具のメーカーも、
長期契約による価格安定化を図ったり素材の使い方を
工夫することでコスト上昇の影響を抑えるために尽力しています。

とはいえ、単に価格を抑えることだけが目的ではなく、
より高級感のあるモデルや特別仕様のアイテムを開発し、
ファンにとってより魅力的な商品を提供することも
重要な戦略の一つです。
例えば、「METAL BUILD」シリーズや「超合金魂」シリーズでは、
Zamak 3を適切に使いながら内部フレームの構造を強化したり、
特殊な塗装を施したりと、見た目や手触りの面でも
さらなる品質向上が図られています。

このように、超合金玩具は、単に「金属製だから高級」
というわけではなく、適切な素材を選びそれをどのように加工し、
どのように仕上げるかといった工夫が詰め込まれた製品なのです。
素材の特性を活かしつつ、時代の流れに合わせた改良を加えながら
超合金シリーズはこれからも進化を続けていくことでしょう。

そして、それを手に取る私たちは、ただ遊ぶだけでなく、
その造りや質感の奥にある技術や素材の魅力にも、
より深く目を向けることで、さらに楽しみが広がるかもしれません。